2007年04月13日

衝撃的な出来事

本当に救急の現場でAEDを使う経験をしてしまいました。
自分でもまさかと思うことでした。
その時は突然やってきました。あっという間の出来事でした。
みなさん自身も遭遇するかもしれないと思うので、あえて報告させていただきます。


衝撃的な出来事私はMFAファシリテーターの仕事をする傍ら、週2日ほど市内の大型の公共施設で警備のアルバイトをしています。(以前はプールの監視員などもしました。)それは、講習の質を高めるため、現場の経験も重要と思ってのことです。不特定多数の人で混雑する場所は救急事例が多いのではないかと思ったからです。しかし、何年もの間、重大な救急事例に遭遇することはありませんでした。




昨日、4月12日、本当にAEDを使う現場に遭遇してしまいました。

それは14時12分頃のことでした。


自分がセキュリティ・コントロールルームにいたときです。凄い勢いで清掃の職員が駆け込んで来ました。部屋のすぐ前の廊下で同僚の警備員が倒れていびきをかいているとの知らせです。

私はすぐに部屋をでました。ドアのそばに45歳の男性警備員が倒れていました。
呼びかけましたが反応はありません。肩をたたいたら、むせる様ないびきのような喘ぎがありました。口から唾液が飛びました。
その様子から先ずは液体から気道を守るため回復体位(横向き)にしました。後頭部に多目の出血が見られました。

耳を近づけてみましたが、呼吸は不規則ですが連続的にありました。
すぐに部屋の中にいた設備の技師数人に呼びかけ救急車を依頼しました。

患者の元にすぐ戻り呼吸確認をしましたがいびきの様でもあり死戦期呼吸と呼ばれる状況なのかもしれません。
万一を考えAEDを取りに行ってもらうよう頼みました。
いびきのような呼吸もすぐに小さくなり死戦期呼吸の疑いが濃くなってきました。

患者を仰向けに戻し、胸部圧迫を開始しました。バリアを持っていませんでしたので感染のリスクを避けるため胸部圧迫のみのCPRです。

1~2分程度でAEDが到着しました。まわりのスタッフも迅速に行動してくれました。
上着とワイシャツのボタンをはずし、Tシャツをハサミで切りました。

意外なほど冷静に、デモンストレーションをやっている時のようにAEDをセットできました。

心電図解析がはじまり大声で周りの人に離れるように言いました。みんなサッと離れました。

AEDから「ショックが必要です。充電中です」という音声ガイダンスが流れてきました。
心室細動(心臓が痙攣している状態)が検知されたということです。

充電が完了し、ショックボタンを押しました。ビデオで見たように患者の筋肉が収縮しました。

このAED(FR2)はプログラムが2001年ガイドラインの機種でした。すぐに再度の心電図解析が始まり、2度目のショックを要求されたのでショックを行いました。
そしてすぐに3度目のショックを要求され、ショックを行いました。

AEDは1分間のインターバルに入りましたので、CPRを再開しました。

CPRの最中救急隊が到着しました。救急隊が準備をする間、CPRを続けるように言われたので行いました。

まもなく4度目のショックの要求があったので離れてもらい、4回目の除細動を行いました。

そこで救急隊に引き継ぎました。救急隊は除細動器を付け替えて、患者を搬送していきました。


以上が昨日起きたできごとです。


周囲のスタッフの迅速な行動のおかげで、救護活動としては100点に近いものだったと思います。
AEDも使用し、現在考えられる最善の手当てが的確に行われたと思っています。


しかしながら、1時間後、病院から彼の死が伝えられました。

万全であっても、助けられない者は助けられないのです。
それは、あまりにも突然に起きた出来事でした。



(あまりにショッキングな内容なので掲載をためらいました。しかしこれは実際に起きた事実です。人間は誰もがいつかは死に直面するのです。AEDを使うような場面はテレビドラマの中だけではない、身近にも起こり得るのだと認識していただければと思います。)


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Posted by エディ タチカワ at 12:22│Comments(12)救急法
この記事へのコメント
実際に遭遇してできるエディさんすばらしいです。

私だったら病院内ではできても街中では絶対できない・・・・

多分手が動かないしパニック状態になるかも・・・・

でもその警備員さんは45歳の若さで・・・・
かわいそうですが、仕方ないですね。
Posted by みや at 2007年04月13日 13:42
みやさん。ドーモです。
確かERで看護師をしていた時期がありましたね。
やはりこういうことは場数を踏んでいるといないとでは大違いだと思います。
この文章は患者が運ばれてしまった後、自分自身の精神的な動揺をケアするために、直後に書き始めた報告書を元に変更を加えた物です。冷静な目で書くことによって感情を薄めていくという、事後の心のケアの手法を自分自身に適用しました。
看護師・医師のみなさんは、毎日がこのような状況かと思います。この文章を書きながら自分には毎日はとても無理だなと思いました。たいへんなお仕事ですね。
正直、書きながらみやさんやゆみさんのことを思い出していました。

ありがとうございます。
Posted by エディ at 2007年04月13日 17:59
流石エディさん、落ち着いた対応ですね、なかなか出来るもんじゃあないでしょう、お見事です。
結果はどうあれ、その警備員さんには勿論のこと、その場に居合わせた周りの人達に対しても完璧な行動だったと思います。
しかし45歳とは僕とほぼ同じ歳、他人事とは思えません。
Posted by Key at 2007年04月13日 21:47
彼とは入社日が3日違いで、身近な存在でした。
後からわかったことですが、極度のストレス下にあったようです。
それにメタボ系の体質が重なったのだと思います。
体の健康は心の健康が伴わないとダメだと強く感じました。
やはり40歳過ぎたら気をつけないといけませんね。

私みたいにいいかげんな生き方のほうが良いのかもしれません。
Posted by エディ at 2007年04月13日 22:16
救命法の講習会を受講しなければと思っていましたが、ぜひ受けなくてはと思いました。
講習を受けていても現場に遭遇したらすんなりと出来るものではないと思いますが、講習を受けているといないじゃ大違いでしょう。
出来るだけ早い機会に受けることにします。
Posted by Kazsan at 2007年04月14日 08:27
kazsanお越しいただきありがとうございます。
同じサーファーでも千葉でレジェンドクラスが勢ぞろいした中でサーフされてるkazsanには必須科目ですね(笑)

救急法は実は簡単です。簡単に出来なければいざと言う時役に立たないからです。MFAも今年から全面的に新カリキュラムになりましたから、受講するには良い機会だと思います。
Posted by エディ・タチカワ at 2007年04月14日 14:33
亡くなられたのは残念ですが
練習したいたことが、迅速に的確にできたのは
凄いことです!
私だったら消火器ですら、きっとあたふたしてしまうであろう
自分を想像すると、本気で、いつ起きても対応できる練習を
人一倍やらなくてはいけないと思います。

実はARD講習依頼をお願いしようと、消防署まで行ったのですが
まだ、実現の運びとなっていません。

滞っていた気持ちが動き出してきました。
Posted by 山田です at 2007年04月14日 14:39
私は一応インストラクターなんで、ちゃんと出来ないとマズイです(笑)
こういうことは誰にでも起こりうるので講習を受けることは大切だと思います。

消防署は救急の現場仕事が本職です。昨今救急出動は非常に多いのでただでさえ手一杯になりつつあります。もっと頻繁に講習を行いたいのはやまやまなんでしょうが、時間・人員など充分に講習に割くことが難しくなってきているのではないでしょうか。消防署の講習会もたいへん役立つものですから、気長に待ってでも受けていただくと良いと思います。
Posted by エディ・タチカワ at 2007年04月14日 15:42
エディさん、お疲れ様です。
その方も、きっとエディさんにCPRしてもらって嬉しかったでしょうね・・・
すごく、悲しいですが・・・
ご冥福を心より申し上げます。

AED、できるなら使うことなく一生過ごせることを願ってます。
でも、いざそのバになったとき、体が反応しなくって突っ立ってるだけ、ってなるのは避けたいです。。。
みやさんやエディさんは現役だから、体が自然に反応するんでしょうね。
私も、AEDの講習があれば参加したいと思いました。
この日記を書いて下さって、ありがとうございます。
少しでも、救われる命が増えることを願ってやみません。
Posted by ゆみ at 2007年04月15日 21:30
CPRのやり方が2006年から変って、
AEDのプログラムも新しくなりました。
AEDよりもCPRがより重要であるという新しいガイドライン。
今までAEDさえあれば助かるとの思いが強かっただけに蘇生できなかった今回の事例はそれを実証してしまっているのかもしれません。

よみさんのプロとして患者を看ていた経験は
いざと言う時、自分でも不思議なほど冷静にいられると思います。
Posted by エディ・タチカワ at 2007年04月16日 09:20
AEDも落ち着いて行えば、
声のアナウンスがあるので簡単そうに見えますが、
実際に、倒れている人にすぐに対応できるか
私はわかりません。

立派に蘇生の努力をされたのですから
お疲れ様でした。
亡くなられたのは非常に残念ですが
気を落とさないで下さい。

現場の意見が聞けてよかったです。
貴重な投稿をありがとうございました。
私もそういう場面に出会ったら
頑張って人助けをしたいな、と思います。
Posted by 謎のセラピスト at 2010年06月07日 23:19
謎のセラピストさん

古い記事を掘り起こしていただきありがとうございます。
この時の経験は今でもほぼ毎回講座で話すネタとなって受講生の皆さんに伝え続けております。
AEDを実際に使用するには死に直面している救急患者に遭遇しなくてはできないので、非常に貴重な体験となってインストラクターの仕事に活かせてもらっています。

AEDの操作手順はとても簡単ですから、繰り返し訓練して自然に体が動くようにするしかないと思います。
Posted by エディ タチカワエディ タチカワ at 2010年06月08日 18:33
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